舟歌(バルカローレ)は、もとはヴェネツィアのゴンドラの船頭歌が発祥で、水面を上下に揺らしてゆったりと小舟を漕ぐリズム感が音楽様式化されています。
「舟歌」は、導入+主要大楽節A+中間大楽節B+主要大楽節A+コーダの三部形式の曲です。導入部は12小節に及び、そのなかでこの曲の楽想が芽生えます(Exs.22は導入とAの一部)。
導入部は、ゴンドラというより、むしろ湖畔に小舟をこぎ出す音楽の前置きで、山に囲まれた湖の幻想的な風景を描いているように思われます。2度繰り返される冒頭の音型fは、主要大楽節Aの第3、4小節(t.15〜16)の音の流れ(f')の元になっています。
また、t.3〜4の、VI→V→I、t.7〜8の、As: I→C:IV+6→I と進む、特徴的な和声は広大で澄んだ音響を感じさせます。この上声の順次進行がt.13〜14の跳躍進行へと導いていきます。
t.9〜12は、主要大楽節Aのための本来の前奏です。この導入全体で、舟歌特有のリズム感を徐々に醸成することが出来れば、あとは流れに乗って小舟をこぎ出すことができますよ。
なお、中間大楽節Bが11小節あるのは、反復とゲネラル・アウフタクトにより延長したものです。