音の進行を分類すると、次の3通りになります(増1度進行は除きます)。
①2音間でとなりの音(2度音程の進行)に進むことを順次進行。
②3度以上の音程で進むことを跳躍進行。
③最初の音と同じ音の場合は保留といいます。同音連打ともいいます。
順次進行と跳躍進行を分類するには理由がありますが、説明は他に譲ります。
同音連打(保留)は、順次進行・跳躍進行と比べて、少し違った性格を持っています。旋律の命は、豊かな起伏を作り上げることですから、同音連打はその趣旨に反しています。対位法の教科書は同音連打を避けるよう指示しています。ところが、多くの名作で同音連打が性格的動機の中心に使われています。ベートーヴェンの「運命」の動機が真っ先にイメージされますね。ピアノ・ソナタでは「熱情」「ヴァルトシュタイン」「月光」等の各主要楽章の主題etc.(詳細参照)。
以上、音の進行に関する概略を整理した上で、「スティリアの女」の旋律に着目して見ることにしましょう。
「スティリアの女」は、アインガング+[A+B+C]+D+[A+B+C]の、中間大楽節に相当するDを中心に、シンメトリーに配置された4つの大楽節で構成されます。いわゆるワルツ形式です。
Aでは(Exs.14-1)、7度の跳躍進行と同音連打の音型が印象的です。この曲はワルツ(舞曲)ですから、ここでの連打はタンバリンのような打楽器を想像しても良いと思います。この曲ではこのような連打が多用されていますね。装飾音符にもフリル感があります。
そして、Dには(Exs.14-2)オクターブ以上の跳躍進行が出てきました。このような大きな跳躍があると、旋律としての一体感が希薄になります。むしろ、2拍目の高い「レ」を旋律線から切り離して、手拍子、カスタネット等のイメージで演奏すると旋律に色彩感が生まれ、弾んで演奏出来ますよ。