「別れ」は、導入(Intro.)+主要大楽節 A + 中間大楽節 B + 主要大楽節 A+コーダの三部形式の曲です。
導入の音型fは、これ自体が動機です。その音型fに由来する動機mが主要大楽節Aの左手声部(t.5〜6)に現れます。t.5右手声部の丸囲みの音群も由来はfです(Esx.12-1参照)。
主要大楽節Aは終止部分が4小節延長して12小節になっています。
t.25から36まで主要大楽節Aが再現し、Aの終止と同時にコーダ(Coda)に入ります(Exs.12-2は再現したAの尾部とコーダ)。この曲のコーダは動機mが回想され、とても印象的です。
t.36の4拍目からの左手声部で回想される動機mを「さようなら、さようなら」と心で歌いながら演奏すると右手声部のエコーと相まって、別れの心情が表現出来ますよ。
別れを描いた作品では、ベートーヴェン作曲「ピアノ・ソナタ作品81a告別」が有名です。「告別」の冒頭に出てくる3つの音符に「Le-be wohl(さようなら)」とベートーヴェン自身が書き記していますね。ベートーヴェンにとっては特別な気持ちで自らが音符にテキスト(文字)をあしらったのでしょう。が、ロマン派の作曲家達は、言葉と音符を繋げて作曲のモチベーションにした作品をたくさん残しています。