この曲は、次のような場面を想像します。
——教会の中に入ると、こどもたちの歌声が響いています。どこで歌っているのか探して進んでいくと、奥まった所に半円を作って静かに合唱隊が歌っています。途中からオルガンが加わり、音響の広がりが天井に抜けていくのが見えました・・・。
「アベ・マリア」は、そんな光景をイメージして書かれたのではないでしょうか。
ピアノ作品には、弦楽四重奏曲やこの曲のような無伴奏混声四部合唱を模して書かれた曲が多数あります。また、様々な楽器の特徴を真似たフレーズにも遭遇します。そのようなとき、想定された楽器や編成をイメージ出来れば、とても気持ちよく演奏出来ます。
「アベ・マリア」は、主要大楽節A+中間大楽節B+主要大楽節A+コーダの三部形式です。
t.16まで無伴奏で多数で歌うイメージですから、息継ぎのタイミングを皆で揃える感覚で演奏しましょう。具体的には、t.4の3拍目のあと、しっかりブレスしましょう。
混声四部合唱は、バス、テナー、アルト、ソプラノの4声部です。バスとソプラノを外声、テナー、アルトを内声と言います。例えるなら、バスは人の体、内声は下着、ソプラノは上着のようにイメージして下さい。下着に相当する内声部は目立たないけれど、とても重要な機能があることが分かっていただけるでしょう。この曲も、内声の響かせ方次第でソプラノのボリューム感が変わってきます。そこで、t.13から16や、t.25から28のアルト声部を歌いながら弾いてみることもお薦めです。また、両手各声部の音量をほぼ均等にして響きを調和させることを意識すると、豊かに響きますよ。