三部形式
A t.1〜8
a t.1〜4
a' t.5〜8
B t.9〜19
b t.9〜12
b' t.13〜19 (t.16からのブリッジを含む)
A t.20〜32 (t.28からのコーダ的延長を含む)
Exs.22-1は、主要大楽節Aと中間大楽節Bの最初の部分です。前楽節aは、ひばりの羽ばたきや旋回を表現しているのでしょう。主音保続の上にI - V の和音進行を繰り返しながらt.4でサブドミナンテに進み変格終止します。
動的な連続モティーフの途中のt.4の内声に、ほっとする息長い音形が効果的に配置されています。その美しさには心を奪われます。そのとき、上声のひばりは空高く旋回していています。t.4の印象的な内声がグランド・ライン(地平)となってひばりとの距離を感じます。
続く中間大楽節Bでは(t.9から)、新たに装飾音符のついた音形が現れます。ひばりの鳴き声の描写です。
t.9の3拍目は偶成和音です。
Exs.22-2は、中間大楽節BからAに再現するためのブリッジフレーズです。t.16は中間大楽節の終端であり、同時にブリッジの冒頭でもあります。右手声部は、ピアノの最高音域まで使ってひばりの歌が奏でられています。
左手声部のバスラインに注目してください。一度うねって順次下行し主音Gに向かっています。和声進行から見れば、中間部e-mollの主和音の第2転回形からD-durの属和音に進行します。t.16からのブリッジ全体を大きな流れとしてみれば、ドッペルドミナンテからドミナンテ、への進行です。
このバスラインを小高い丘の上から下って行く——とイメージしてみて下さい。そして、この間の上声と下声との間に出来た空間が刻々と変化する様子を確かめながら演奏してください。
ブリッジ・フレーズは、二つの異なる楽段や主題間を繋ぐための楽句のことです。言葉が分かりにくいので具体的に説明すれば、第1主題と第2主題があるソナタ形式の提示部で、その二つの主題の橋渡し役になる部分をブリッジ・フレーズと言います。ただし、ソナタ形式の場合は特に「推移部」とか「移行部」の名称が付いています。
二つの楽段をA , B として、そのまま繋げることも出来るでしょうが、AとBとの間に川が流れていて橋を渡った、というと音楽に広がりが出てきます。その場合の橋に相当する部分がブリッジ・フレーズです。架橋句とか、経過句とか言います。微妙なニュアンスの違いで使い分けられたりもします。フーガの主題の入りが終わった後のブリッジをエピソードと呼びます。
橋を渡るとき、その目的は、対岸の町に行くことや、橋を渡る行為そのものだったりします。ブリッジ・フレーズも置かれた場所ごとにその目的は明確で、演奏は、文脈から判断してその役割を果たすことが大切になります。