チャイコフスキー「こどものためのアルバム作品39」の表現 楽曲分析と演奏表現

13. 「ロシアの踊り」Kamarinskaya

カマリンスカヤは、ロシアの踊りの音楽です。それを主題とした変奏曲で動的な音楽作品に仕立てています。強弱要素と単純化によって遠近感を持たせ、実際にその場にいるような迫力があります。

 第13曲「ロシアの踊り」の構成

アインガング t.1 (またはゲネラル・アウフタクト)

変奏曲の主題 t.2〜7 (t.8〜13までは繰り返し)

第1変奏 t.14〜25

第2変奏 t.26〜37

第3変奏 t.38〜49

ロシアの踊り(Exs.13-1はその冒頭)は、アインガングまたはゲネラル・アウフタクトが1小節あります。といっても、この主題は無限ループのようになっていて、冒頭のバスのD音は、この主題の最後の音が鳴っているのです。

主題はt.2からの6小節で、3小節の核となるモティーフを繰り返しています。さらに、この主題を繰り返して全体で12小節で構成されています。主題の核が4回繰り返されたという印象です。

主題提示の後、3つの変奏が続いて演奏されます。

主題から変奏3までの全体のデュナーミクをみると、

    Thema= p  Ver.1= mf  Ver.2= f  Ver.3= mf → dim.→ p→ pp  

となっており、デュナーミクを使った遠近法が意図されています。第2変奏で踊りの場に最も近づいて、その後遠ざかっていくのですが、その第2変奏の音形が最も単純化されていることにも注目して下さい。接近したためディテールが飛んだ状態です。

ロシアの踊り

カマリンスカヤは、ロシアのフォークダンスがもとになっているそうです。グリンカの作品に《2つのロシアのフォルクスリーダーによる「カマリンスカヤ」オーケストラのためのファンタジー》があります。そのTanzlied(踊りの歌)の開始は次のようです(Exs.13-2)。

カマリンスカヤ

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▼INDEX

1. Morning Prayer
朝の祈り

2. Winter Morning
冬の朝

3. Playing Hobby-Horses
木馬に乗って

4. Mama
ママ

5. March of the Wooden Soldiers
おもちゃの兵隊

6. The Sick Doll
病気のお人形

7. The Doll's Funeral
人形のお葬式

8. Waltz
ワルツ

9. The New Doll
新しいお人形

10. Mazurka
マズルカ

11. Russian Song
ロシアの歌

12. The Accordion Player
お百姓の歌

13. Kamarinskaya
ロシアの踊り

14. Polka
ポルカ

15. Italian Song
イタリアの歌

16. Old French Song
フランスの古い歌

17. German Song
ドイツの歌

18. Neapolitan Song
ナポリの歌

19. Nanny's Story
おとぎ話

20. The Sorcerer
魔女

21. Sweet Dreams
甘い夢

22. Lark Song
ひばりの歌

23. The Organ-Grinder Sings
辻音楽師

24. In Church
教会にて