舞曲マズルカの固有の抑揚が分かりやすい伴奏形で書かれています。
三部形式。
A t.1〜18
a t.1〜8
a' t.9〜18 (t.16〜18は終止延長)
中間部B t.19〜34
b1 t.19〜26
b2 t.27〜34 (b2はb1の繰り返しと尾部の原調復帰のための変更)
A t.35〜52
マズルカは主調d-mollで、主要部Aは平行調のF-durで閉じ、中間部Bに入ります。Exs.10-1 は、その中間部から主要部Aに再現する所です。
中間部は、b1, b2 の 2つの部分で構成されています。舞曲の中間部によくある繰り返しのパターンと、3拍目に置かれたマズルカ固有の抑揚を強調したようなアクセントが特徴です。
和声進行の側面からみれば、主要楽節AはF-durで終止しているので、中間部Bの開始和音はd-mollの主和音とも思えます。その感覚で進むとフリギア旋法の旋律です。素朴な感じの中間部です。
Exs.10-2はマズルカの冒頭部分ですが、1拍目は、旋律、バス共にD音だけです。マズルカ固有の抑揚(この曲ではおもに3拍目)の表現は大切ですが、それ以上に最初の両声部の響かせ方には注意深さが必要です。
1拍目のバスのD音を弾く時、3拍目に出てくる和音の根音として支えのある音を響かせて下さい。それと共に、3拍目の固有の抑揚を支えるためにも、1拍目の音は深く奏でて下さい。拍頭には、拍頭としての役割があります。演奏に際しては、積み上げられた要素の集合体としての音を奏でることが求められます。