チャイコフスキー「こどものためのアルバム作品39」の表現 楽曲分析と演奏表現

4. 「ママ」Mama

「ママ」は、シューマンの「こどもの情景」の第4曲「おねだり」と似た書きぶりの曲です。曲は長いですが、一部形式です。

 第4曲「ママ」の楽節構成

大楽節  t.1〜36 

   前楽節 t.1〜16 

   後楽節 t.17〜36 

Exs.04-1 は、第4曲「ママ」の前楽節です。
t.12までは、2小節ごとに反復しています。終止以外のとこでは、幼いこどもがママの言葉を繰り返している様子です。

t.8までは、メロディーと低音とが3度音程を保っていて、バスがメロディーを支えることも作曲者の構想の基にあったことでしょう。

主調 G-dur で始まり、t.9から上属調平行調(h-moll)の微弱な終止が見られ、続けてt.13からはブリッジ・フレーズのようにみえて、最終的には属和音に進行する半終止がt.16に置かれ、t.17から後楽節に繋がっていきます。t.13からの和声進行で、t.13〜15は h-mollのII度の七の和音からD-durのII度の七の和音に進んでいます。その間のt.14などの ( I ) の和音は経過音で出来た偶成和音です。骨子は「シ」→「ミ」→「ラ」→「レ」と完全五度ずつ下行する和声進行をたどり、t.17の「ソ」に着地する、というものです。和声分析では、まず骨を見ましょう。

第4曲「ママ」

後楽節のt.25からは、t.9からに対応していますが、展開的です。幾つかの調を経過してt.32で完全終止します(Exs.04-2)。

第4曲「ママ」

  t.25から(Exs.04-2)想像を膨らませて演奏しましょう。

t.25は最終小節に向かう始まりです。
それまで3拍子で進んでいたものが t.25で拍節が2拍子に変わりました。お話を終えて、こどもが眠りにつく準備が始まります。

t.25からの借用和音の連用は、浮遊感のある優しく柔らかい音色で、子供の背中をゆっくり「とんとん」(2拍子で)とたたいてあげるような動きをイメージして下さい。

t.29の偶成和音は和らいで、t.30の休符は眠りに落ちる瞬間のように。

t.33からも継ぎ目なく徐々に消えていくような感じで。コーダとしてフレーズを分断するのではなく、あくまで終止がエコーして延長している、と捉えてみましょう。

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▼INDEX

1. Morning Prayer
朝の祈り

2. Winter Morning
冬の朝

3. Playing Hobby-Horses
木馬に乗って

4. Mama
ママ

5. March of the Wooden Soldiers
おもちゃの兵隊

6. The Sick Doll
病気のお人形

7. The Doll's Funeral
人形のお葬式

8. Waltz
ワルツ

9. The New Doll
新しいお人形

10. Mazurka
マズルカ

11. Russian Song
ロシアの歌

12. The Accordion Player
お百姓の歌

13. Kamarinskaya
ロシアの踊り

14. Polka
ポルカ

15. Italian Song
イタリアの歌

16. Old French Song
フランスの古い歌

17. German Song
ドイツの歌

18. Neapolitan Song
ナポリの歌

19. Nanny's Story
おとぎ話

20. The Sorcerer
魔女

21. Sweet Dreams
甘い夢

22. Lark Song
ひばりの歌

23. The Organ-Grinder Sings
辻音楽師

24. In Church
教会にて