フレーズ途中に、旋律と和声の工夫で弱進行をつくり、独特の雰囲気を醸成します。
三部形式
A t.1〜16
a t.1〜8
a' t.9〜16
B t.17〜31
b t.17〜24
b' t.25〜31
A t.32〜47
一般に、主要大楽節Aと中間大楽節Bのあいだには、統一と対照が図られます。では、この作品ではどの要素が統一に寄与し、対照しているのか、という点を見ていこうと思います。
Exs.21-1と21-2は、主要大楽節Aと中間大楽節Bの最初の部分です。
主要大楽節Aと中間大楽節Bの統一要素としては、リズム形Y-1、リズム形Y-2、が共に同一であることが、全体の統一に寄与しています。
では、対照の点は、というと、
主要大楽節Aは、メロディーが上声部にあって、順次上行、その後5度下行。
中間大楽節Bは、メロディーが下声部にあって、跳躍下行、その後2度下行。
調では、
主要大楽節Aは、C-dur
中間大楽節Bは、上属調G-dur。
開始のデュナーミク、表情では、
主要大楽節Aは、弱奏、ドルチェ・カンタービレ。
中間大楽節Bは、やや強い、マルカート。
などが挙げられます。
以上、各部の統一と対照について確認して下さい。
Exs.21-3は、主旋律と冒頭8小節の和声進行を要約したものです。旋律は①と②が同じ形で③と④が同じ形になっています。
和声では、t.4からt.5への進行はドミナンテからサブドミナンテへの弱進行が見られます。②と③は、和音的な「しりとり」をしています。つまりどちらも、IIからVの和音への進行。その結果として弱進行となったのです。確かにt.4のバスG音は属和音の根音で、t.5で主音に進んでいますから、進行としては自然です。が、それは更にt.6のH音に進むアポジャトゥーラでもあります。
t.4からt.5への繋がりがこの旋律の独特の甘い雰囲気を作り出しているです。
ここでは、新鮮な気持ちで上昇する旋律①〜②を弾いた後、思い直したように内省的に③〜④を演奏してみてはいかがでしょう。