ショパンの和声 〜譜読みのための分析
練習曲集作品10から

はじめに

ショパンの練習曲集作品10の中から、3・9・12番の和声を分析します。

ショパンの和声
▼INDEX
はじめに
1. 練習曲 作品10-3  ホ長調 Chopin/Etude E-dur Op10-3
2. 練習曲 作品10-9  ヘ短調 Chopin/Etude f-moll Op10-9
3. 練習曲 作品10-12 ハ短調 Chopin/Etude c-moll Op10-12


3・9・12番は、練習曲集作品10の練習を始めるとき、取り上げる最初の曲としてこれらのいずれかが候補に挙がって来そうな曲です。3番と12番には「別れの曲」、「革命」のタイトルがあり、音楽的にわかりやすいし、他の練習曲と比べて、指が鍵盤に超絶あたりにくかったり、指への過重な負荷の心配も少ない、などの理由があると思います。
そうだとしても、譜読みを進めていくにつれ、迷路に入り込んでしまって「なにやってるのかわからない」状態になりそうな箇所があり、そこで、譜読みの意欲が絶たれ頓挫する、というようなこと、ありませんでしたか。
このような箇所の中には、一般的でない調で記譜されたことに起因する部分があります。「一般的でない調」とは、24の調以外の調のことで、本稿では、「五度圏外調」と呼ぶこととします。五度圏外調については、個別分析のページで詳しく説明します。
五度圏外調の存在を認識し、転調経過、和声進行が整理されると、頭の中に入りやすくなります。これで、迷走することなくショパンの譜読みが行えるようになり、譜読みがとっても楽になります。
分析は、演奏の方針に確信を与える手助けをしてくれます。

分析に用いる和音記号について

和声分析を記号で表現するとなると、様々な書き方があります。ここでは、大筋の進行が解れば足りるよう、要約して楽譜に書き込みます。
その時点での調や、調の確定度、和声音と非和声音との区別、主調との関係等々の理解に資することを目的に進めます。

Exs.01で示したように、和声分析を記号で表現する際、大筋が見通せることを優先し、例えば、ドミナンテからトニックへの粗々の進行が解ればよいことについては、そのドミナンテの種類(属7の和音等々)は記述しません。
・ 1度の第2転回形については、必要であれば 2) のように明示します。
・ 5度調の借用和音は 例示3) のような記号を用います。
・ 同主短調を借用する場合も 例示4) のように記述します。
・ 5)における記号は下行変位を示します。

用語、譜例について

説明文中の音楽用語については、本サイトの別項目に、「ブルグミュラー25の練習曲」の表現チャイコフスキー「こどものためのアルバム作品39」の表現 があり、詳しく説明しています。リンク表示していますから、そちらもあわせてご参照下さい。

分析にあたり、t.は小節番号を示します。和音記号は、最小限、簡略に記しています。また、例示楽譜は和声分析のガイドとして最低限記載していますから、音符・休符以外の、記号の多くは省略しています。

ショパンの和声
▼INDEX
はじめに
1. 練習曲 作品10-3  ホ長調 Chopin/Etude E-dur Op10-3
2. 練習曲 作品10-9  ヘ短調 Chopin/Etude f-moll Op10-9
3. 練習曲 作品10-12 ハ短調 Chopin/Etude c-moll Op10-12