エフ音楽教室

自発的で音楽的な演奏表現力を身につけるピアノ新曲視奏 導入課題

 

ピアノがある程度演奏できるようになると新曲演奏スキルが求められる場面があります。しかし、練習なしで、いきなりの演奏はたやすくありません。 今回は、ピアノ新曲演奏スキルの獲得を阻んでいる主な要因をまとめてみました。新曲演奏スキルにまつわる事情が分かれば、その学習法も工夫できるというもの。そして、その学習を容易に進めるための練習課題を公開しました。

自発的で音楽的な演奏表現力を身につけるピアノ新曲視奏

導入課題

▼目 次

1. 新曲演奏を難しくしている二つの壁

2. 課題実施の目標

3. 練習課題の特徴

4. 課題の練習方法と注意点

 

1. 新曲演奏を難しくしている二つの壁

ピアノ新曲演奏(新曲視奏、初見視奏とも言われています)とは、初めての曲の楽譜を読みながら、演奏することです。新聞を読むことや、絵本を読み聞かせするようなものです。大して難しいことではなさそうでいて、簡単ではない、というのがピアノ新曲演奏です。

ピアノの練習を重ねて、ある程度弾けるようになっても、歌を歌うお友達に「シューベルトのこの曲の伴奏をお願い」と、楽譜を出され、その場でスラスラと伴奏できるか、というと、そうはいかないことが多いものです。 そこで、「新曲演奏」の練習をしようと考え、教材を探しますが、なかなか見当たりません。ピアノの先生に伺っても、大抵、「では、新曲演奏のレッスンをしましょう」とはなりません。レッスンで上達できる性質のものではない、と感じているからかもしれません。

冒頭で新曲演奏は、新聞を読むようなもの、と述べましたが、新聞を読むことに比べて、異なる点が二つあり、それらがハードルを高くしているのです。そこを理解して学習すれば、道は拓けるはず。

一つ目の大きな問題は、ピアノを弾く場合、楽譜と鍵盤との間に距離があることです。もし、ブラインドタッチ(鍵盤を見ないで演奏すること—実際にはちらっと見ます)ができれば、もっと滞りなく演奏を続けることができます。楽譜と鍵盤を目線が頻繁に移動し、タイムロスや混乱が生じることがなくなるからです。

もう一点は、楽譜は平面に描かれた図ですが、音楽はメロディーやハーモニーによる、立体的構造だということです。平面図と立面図を組み合わせた建築設計図を読むことに似ています。どちらも楽譜や図面だけで立体空間をイメージすることは難しいですね。

この二つの難問などによって、ピアノが弾けても、新曲演奏は苦手、ということになっているように思われます。 難問克服のために、「新曲演奏スキル」を身につけるための練習課題に取り組んで下さい。


2. 課題実施の目標

新曲視奏導入練習課題は次のような目標を掲げています。

本課題に取り組むと、次第に「楽譜を見て音楽をイメージすること」を意識するようになり →和声感が高まり、さらに形式に対する認識が深まってくるようになります。

 →そうすると、ピアノのブラインドタッチが自然に習得できるようになります。

  →そして、最終目標は、脳と心から発した、自発的な音楽表現を意識するようになることです。

 

 

3. 練習課題の特徴 

■課題について  

課題は 「導入課題」、「基礎課題」、「総合課題」に分かれています。
今回は「導入課題」について、詳しく説明します。

初見演奏課題例

導入課題(Exs.1)は、次のような書式で書かれています(画像をクリックするとPDFファイルが開きます)。  

右手の声部(ト音記号の部分)は、歌うことを想定して単声で書かれています。歌える音域、無理のない息継ぎが可能なフレーズなどに留意しています。器楽的な音形、オクターブをこえるような跳躍進行などは現れないので、ブラインドタッチでの演奏が比較的容易になります。 

左手の声部(ヘ音記号の部分)は、メロディー・ラインの和声進行が簡潔にリアリゼーションされていています。つまり、和声進行の要約です(ただし、当然ですが、これが唯一ということではありません)。その結果、旋律線が持っている骨格が見えてくるので、調の変遷や楽節構造が理解しやすくなります。
また、メロディーに沿ったカデンツを繰り返し演奏することになり、響きと指先と脳が連携しやすくなります。  

・特に、左手のブラインドタッチが自然に習得できるよう、ある音を軸にして、距離感をつかみながら次の音を弾くことができるよう、随所に指の基軸点を置き、鍵盤上の指ポジション移動が少ない課題を作成するよう心がけています。

・強弱記号、発想記号等の記述は最小限にしています。  

 4. 課題の練習方法と注意点 【全体の注意事項】  

■課題の練習方法は次のとおりです。

課題は、まず右手声部を視唱し、続いてピアノで全体を演奏しましょう。

(1)課題例楽譜(Exs.1の楽譜、上記)を用紙に印刷して、ピアノの譜面台に置きます。 右手のメロディーをしばらく黙読し、主調がハ長調(C-dur)であることが認識できたら、ピアノで主和音を弾きます。  

(2)数分間、右手声部を予見しましょう。慣れないうちは時間をかけてイメージして下さい。

(3)声を出して歌ってみましょう。  

(4)引き続いて、ピアノで演奏するために、全体を数分間予見して下さい。メロディーを支える和声進行を意識して下さい。転調経過を観察して下さい。  

(5)演奏して下さい。 予見のとき、頭の中で音楽が響く状態が理想です。響きを予想して演奏すると、実際の響きは予想と違うかもしれませんが、修正の繰り返しによって、正確性が向上していきます。

 

練習課題は、こちらからダウンロードして下さい。  導入課題 →  

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INDEX

ピアノ新曲視奏

導入課題

基礎課題

総合課題

【改訂版について】
本項は、2020版「ピアノ新曲視奏 導入課題」の課題の細部を改訂し2021年10月に公開したものです。
改訂は、主に3部に分かれていた課題を統合し、左手のリアリゼーションを見直し、より弾きやすくしたことです。
難易度について、25番までは、緩やかに難度が増します。26番以降の課題の難易度は順不同です。

【ご使用について】
すべての練習課題は、無料でダウンロードしていただけます。個人の練習に限ってお使いください。
ピアノ・ブラインドタッチと和声感覚を身につけて、自発的で音楽的な演奏表現力を獲得するための練習課題は、こちらからダウンロードして下さい。

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