エフ音楽教室

「ピアノ学習者のための新曲視唱」活用の仕方

 

ピアノ学習者のための新曲視唱」は、ピアノを学習している中学・高校生以上の方や、ピアノ指導者等を念頭に作成した新曲視唱練習課題です。ソルフェージュ教材ダウンロードページから楽譜をダウンロードしてお使い下さい。
ピアノ学習者等にとって、新曲視唱のトレーニングがどのように有効なのか、この項目は 「ピアノ学習者のための新曲視唱」を活用して、効果的に音楽の基礎能力を高めるための要点をご説明するページです。

 

ピアノ学習者にとても有益な新曲視唱。その練習の着目点

 

新曲視唱(初見視唱)は初めて見る旋律を歌います。練習では、

1. 楽譜を見て実際の音楽が頭の中で響き、

2. その響き通りに声をコントロールして、音の高さや、長さなどを発声できること

これらふたつの能力が必要です。

 

新曲視唱が苦手という学習者は、これらの要素のどちらにより多く問題があるか考えてみて下さい。そして、ふたつのことを分けて学習してみてはいかがですか。学習のアプローチが弱点に集中できれば、解決の糸口がつかめるでしょう。

2.の音程を上手にコントロールして発声できない、という人は、例えば『コール・ユーブンゲン』という教則本で練習しましょう。このような教本の価値は使い方次第です。

一方、楽譜を見て実際の音楽が頭の中で響くためには総合的な音楽力が必要です。音楽系大学の入学試験で「新曲視唱」を課しているのは、手早く受験生の音楽基礎力を見定めるためにあると言えましょう。受験生にとっては、入試科目にあるから練習する、かもしれません。が、入試課題は、音楽を目指す生徒に対する大学からの愛ある厳選した事前指導とインビテーションなのです。
入学までに練習しクリアしてもらいたい最低限の準備を提示し、生徒がそれらを練習・学習していく中で、どんどん興味が沸き、自分にとって生涯続ける価値のあるもの、と確信できるようになれば、入学後も後悔の無い日々を過ごせるだろう、という考え。音楽する先輩の親心ということも出来ますね。新曲視唱の練習には、それほど多くの栄養が含まれている、という訳です。では、ピアノ学習者にとって有効な栄養とはどのようなものでしょう。

 

音楽の基礎能力の中でピアノ学習者が忘れがちな点を新曲視唱で認識しよう

 

ピアノのそれぞれの鍵盤に割り当てられた音の高さは決まっています。どの鍵盤もおおよそ、同じ力で同じ音量の音が鳴ります。単旋律をピアノで演奏しようとした時、16分音符の連続からなる機械的な音楽は得意でも、その反対のしなやかな内容で、柔軟な跳躍を含んだ音楽は、ピアノには少し苦手です。
音楽はカンタービレが基本だと思うあなたにとって、ピアノのカンタービレを習得するためには、実際に声を出して歌ってみることが一番。歌では、ピアノほど簡単にはオクターブの跳躍をなめらかに歌うことは困難です。この「困難さ」こそが、跳躍した感を醸し出しているのですから、ピアノで弾く時も、歌うように表現してあげれば良い、と分かります。


もうひとつの忘れがちな点は呼吸です。ピアノを演奏するには、息継ぎ(ブレス)のことを意識しなくても演奏できるということ。長い音価の音を鳴らしている間に息できます。歌っているさなかに息をすることは出来ません。ピアノの学習者の多くがブレスに無頓着です。歌えば、ブレスの重要性が身にしみてきます。ピアニストにとって歌うことの重要性が再認識出来ますね(詳しくは呼吸に関する説明参照)。
ここまでのスキルは、『コール・ユーブンゲン』等の視唱練習でかなえられますが、新曲視唱では、更に多くのことが認識できるのです。


大抵のピアノ曲は両手で演奏し、それで音楽全体が完結しているので、譜読みをしてある程度弾けるようになったら音楽が見えた、という感覚になります。ですが、新曲視唱ではそうはいきませんから、積極的に拍を心で刻み続けることを心がけようとします(詳しくは拍点についての説明参照)。
また、単旋律には和声の支えがないので、旋律が内包している和声の推移を感じ取ろうとします。これがあると安定感のある歌唱が出来ますから。


以上を要約すると、新曲視唱の練習によって次のような成果が期待できるのです。

1. 拍(厳密には拍点)を強く意識するようになる。
2. ブレスの重要性が分かり、楽節構造とブレスとの関連が認識できるようになる。
3. ブレスまでの時間的長さと楽曲の基本速度との間に深い関係があることが理解できる。
4. 旋律はそれ自体に和声進行を内包していて、すべての音が定めを持って進むべき音に向かっていることを感得するようになる。
5. そのほか諸々、あなたのピアノ演奏が生き物のように柔軟性に富んだ表情になるための沢山のヒントが得られる、という事です。

 

課題の練習方法


課題の練習方法は次のとおりです。

(1)課題楽譜をしばらく黙読し、主調を認識できたら、ピアノで主和音を弾きます。
(2)数分間、予見しましょう。
(3)再度、ピアノで主和音を弾き、その後、声を出して歌ってみましょう。


予見の質を高めよう

 

課題楽譜を事前に黙読することを予見と言います。入試の場合、予見の時間は課題曲の長さ、難易度等に応じて設定されますが、本課題の練習では、たっぷり取って下さい。
予見の質を高めることが本課題を達成するための最重要部分
なのです。

では、予見で何をするか、順を追って説明します。
a.) 曲全体を見て、調、速度記号、拍子等を確認。
b.) 主調の主和音をピアノで弾きます。弱奏で。響きを感じ、体全体で主音(主和音)を定着させます。途中で道に迷っても、必ず主音に帰って来られるようにするためです。
c.)  どこでブレスするかを計画します。歌う速度(テンポ)とフレーズの長さ、ブレスのタイミングは深い繋がりがあります。テンポとブレスの位置は、パフォーマンスに大きな影響を与えますから試行を繰り返して下さい。
d.) すべての音符のそれぞれがどの音を目指して進んでいるのか、感じながら黙読します。もし、途中で転調しているなら、転調経過を確認します。

慣れない間は、ここまでの作業に5〜10分位はかかるでしょう。楽譜を黙読(黙奏)する習慣を身につけたら、多声の楽譜も頭の中で響くようになりますよ。

最後に、ピアノを今以上に素敵に弾けるようにしたいと思っているあなたに提案します。いま練習中のピアノ曲の楽譜を就寝前のリラックスした頃に黙読してみて下さい。黙読の習慣化をおすすめします。

 

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▼INDEX

「ピアノ学習者のための新曲視唱」活用の仕方

 

ピアノ学習者にとても有益な新曲視唱。その練習の着目点

音楽の基礎能力の中でピアノ学習者が忘れがちな点を新曲視唱で認識しよう

課題の練習方法

予見の質を高めよう