エフ音楽教室

「こどものソルフェ」活用の仕方

 

「こどものソルフェ」はこどものための視唱練習課題です。ソルフェージュ教材ダウンロードページから楽譜をダウンロードしてお使い下さい。

この項目は 「こどものソルフェ」を活用して、音楽の基礎能力を高めるために着目すべき点についてまとめてご説明するページです。

 

「こどものソルフェ」導入の前に


小学校入学前にピアノのおけいこを始めたばかりのお子様には、このテキストに先だって暫くは模唱の実施をお薦めします。

模唱は次のような方法で行います。 まず教師がピアノを弾きながらドレミ唱法(厳密には固定ド唱法)で、「ド」から「ソ」までの範囲で、2音から5音くらいまでの音列を歌って聞かせ、生徒に真似て歌わせます。

しばらくして慣れてくると、教師はドレミで歌うことを止め、ピアノを弾くだけにします。生徒はドレミ唱法で模唱できるようになるでしょう。

徐々に音域を広げてみましょう。「ラ」はこどもにとっては、勇気の必要な高さです。「シ」は誰にとっても難しい音です。低い「ド」から高い「ド」に跳躍できたら、こどもと快感を分かち合いましょう。

そのようにして、更に進んでくれば、小楽節(例えば、4分の2拍子で4小節程度のフレーズ)ほどの長さでも覚えて歌えるようになります。付点やシンコペーションのリズムを混ぜ込んだり、また、スタッカートなどを加えると、表情の変化を捉えて生き生きと歌えるようになります。長調、短調の別なく、歌えます。大きな跳躍が出来るようになります。黒鍵の音があっても大丈夫。そのようにして階名で歌うことに慣れてきたら「こどものソルフェ」のテキストを始めましょう。

 

 

「こどものソルフェ」を使って
ピアノを始めたばかりのこどもに視唱練習を実施する3つの意義


こどものソルフェで視唱練習するときは、「呼吸」、「音高感」と「拍感」の3つに着目して進めて下さい。音楽の基礎能力を着実に身につけさせることが出来ますよ。

 

 

1. 呼吸について

ピアノのおけいこ導入初期段階では、両手で弾き始めるだけでも大変な作業です。呼吸に無頓着なままピアノの練習をすることがあっても無理ないことかもしれません。しかし、音楽表現では自然で合理的な呼吸がとても大切です。そこで、呼吸を意識しなくては歌えない、視唱の練習が役立つのです。

呼吸という言葉は広く一般に使われていますから、以下、音楽用語として定着している「ブレス」という単語を用いて説明していきます。

a) まず、歌い始める1拍前にブレスすることを意識させます。

教師も一緒に生徒のブレスに合わせて、開始の音(右手で)と和音(左手)を伴奏し、歌い出しが揃う感覚を身につけさせて下さい。教師は、必ず生徒のブレスに合わせて伴奏を開始することがポイントです。最初のうちは、1拍分のブレスのタイミングなどが整わず、歌い出せないこともあります。そのときには、先生がブレスを誘発するよう導く必要があるでしょう(拍感を得るためにを参照)。

ブレスのとき、肩が上がっていたら浅い呼吸になっています。そのようなときは、肩が上がっていることを意識させると、次第に脱力できるようになります。普段は肩が上がったりしませんから。

b) 「こどものソルフェ1」は一曲4小節で作られています。2小節目の最後に軽いブレスを促して下さい。

ただし、2小節目の終わりまでに休符がある場合は、休符の箇所でブレスします。

次に、8分音符が出てくるようになると、ブレスする場所を検討する必要があるかもしれません。生徒に原則を説明しながら、ブレスの場所を示しましょう。ブレスを意識して歌う、ということが大切なのです。そして、決めたブレスの場所で必ずブレスをさせて下さい。

c) 歌い出しのブレスと、曲の途中でするブレス(息つぎ)を区別して指導しましょう。

息つぎは高度なテクニックが必要です。徐々に慣れていくようにしてください。

呼吸でもう一つの大切なことは、息を吸って→吐いて、の循環の中で、息を吸ったあと、止める動作があり、その後吐く、ということです。動作の切り替えの時、止める動作が充分確保されなければ、吐く制御がしにくくなり、フレーズの最後まで息が続かなくなったりします。

以上、普段意識下で行っている自然な呼吸を、音楽では計画的・意識的に実行する、ということを「こどものソルフェ」を使って視唱指導します。そして、自然な呼吸に根ざしたフレージングで音楽表現出来るようになるといいですね。

 

2. 音高感を得るために

大きな跳躍進行の旋律を演奏するときには、目的の音に向かう直前の姿勢が大切です。この場合の姿勢とは、心づもりと言い換えても良いでしょう。例えて言えば、道を歩いていて、水たまりがあったら、飛び越えます。足をどの程度屈伸したら飛び越えられるか、考えて準備します。考えなく飛び出した後での修正は出来ないですね。それに似ています。演奏する音の高さをイメージした後に演奏してこそ、リアリティのある音になります。

ピアノの鍵盤はスイッチのように並んでいるので、押せば目的の音を鳴らすことが出来ますが、旋律の自然な繋がりを得るには、確実に目的の音を押す行為と共に、その音に向かう姿勢が伴っていることが必要なのです。

a) こどもたちにとって「ド、レ、ミ、ファ、ソ」までの音高は比較的容易です。時間をかけて定着を待ちましょう。
b) 目の前に階段がある、とイメージさせます。

「ソ」の高さを目線として、実際に目の高さに手を上げ「ソ」を歌わせます。次に頭の高さまで手を上げて、その高さに向かって「ラ」を歌わせます。仮想の音階段が目の前に出来上がるよう工夫して指導します。

 

3. 拍感を得るために

ピアノ演奏では、両手を使って拍点を刻んでいます。例えば、譜例(Exs.01)のように、左手は4分音符で基本拍を刻み、右手は付点4分音符と8分音符の音楽を演奏するとき、右手の旋律は、左手のガイドに助けられて、半ば自動的に演奏出来ている場合があります。つまり、ガイドの刻みによって、拍感が希薄なまま演奏し、拍節感覚の意識化を阻害する結果になっていることがあるのです。

こどものソルフェ譜例

付点の音符(x)は、2拍目の壁を突き破って進むイメージが欲しいのですが、両手がセットになっているピアノ練習では、拍感が希薄でも弾けるのです。ピアノの練習での盲点と言えましょう。

視唱の場合、この付点の音符(x)を歌うときには、2拍目の拍点(y)を体内で刻み、しかも、拍点のこぶが出来ないよう歌います。これにより、主導的に正確な拍節の保持を意識することが出来るようになってくるのです。

次のように注意を向けて練習して下さい。項目1の「呼吸」で述べた事項と同様ですが、「演奏中はブレスしたテンポを心で刻み続ける」という意識を持つことの重要性に着目して下さい。

a) 歌う曲の速度を定め、そのテンポでブレスし歌い始めて下さい。

最初は、教師がしっかりテンポを示して下さい。例えば、開始のために「どうぞ」と促して下さい。

「どう(1)、ぞ(2)」の「どう(1)」は予備拍で、「ぞ(2)」が上拍です。こどもはしっかり「ぞ(2)」のテンポでブレスして歌い始めます。

「こどものソルフェ」1から3までの課題には、上拍始まりの曲はありません。

b) 開始前のブレスに慣れてきたら、生徒が主体的にブレスして演奏を開始します。

教師は、生徒のブレスに合わせ、歌うための補助として伴奏しましょう。伴奏は徐々に抑制的に行い、生徒が自らリズムを心で刻み、音の階段を意識できるよう手助けします。次第に、無伴奏で歌えるようになってきます。

以上、「呼吸」、「音高感」と「拍感」の3つは、実際に歌って定着していくものです。そして、これらの感覚が意識できるようになると、ピアノを演奏する時にとてもよい効果をもたらします。

ピアノを弾くことだけでは得られにくい感覚を「歌う」ことで高めていくトレーニング。是非実行してみて下さい。

 

ページトップにもどる

「こどものソルフェ」活用の仕方

▼INDEX

「こどものソルフェ」導入の前に

「こどものソルフェ」を使ってピアノを始めたばかりのこどもに視唱練習を実施す3つの意義

1. 呼吸について

2. 音高感を得るために

3. 拍感を得るために