エフ音楽教室

4声体和声聴音 着実に習得するための課題集 


4声体和声聴音とは

4声体和声聴音(しせいたい)は、無伴奏の混声四部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バスの各パート)で書かれた8小節程度の課題がピアノで演奏され、それを聴いて大譜表に書き取ります。

音楽系大学入試で出題される複声部聴音のうち、2声のものは通常、上声と下声の音価はそれぞれ異なっているものですが、4声体和声聴音では、一般にすべての声部が同時に奏でられるので、「和声聴音」としています。ただ、和声聴音という言葉が、同じ音価であることを示す訳ではありません。それぞれの大学によって使い方がまちまちのようです。それでも、4声体和声聴音が大切な音楽の基礎能力のひとつであることは確かです。

さて、入学試験で4声体聴音が課される、と知っていきなり4声体での書き取りの練習をしても、ハードルが高く、どうしたら内声まで聞き取れるのか解らず、苦手意識を持ってしまう受験生も多いです。

そこで、苦手意識を克服するために、着実に習得するための実施課題例と方法をお示します。

 

2声部聴音01

学習手順の考え方と導入課題

旋律聴音は単旋律の音高と音価を書き取るのに対して、和声聴音では複数声部を分けて聴き取る必要があります。つまり、複数の同時に響く声部から1声部を分離して聴けるようになることがポイントです。

ですから、学習の最初の段階は2声部聴音の導入課題が最も効果的で、聴く力を高めてくれます。課題の難易度は、難しい必要はなく、持続音を聴き続ける集中力を養い、両声部を分離して聞き取れるようになれば良いのです。
その後、3声体和声聴音、4声体和声聴音課題の書き取りを順次行って下さい。

 

では、導入課題を始めましょう。

こどものソルフェ「2声部聴音」穏やかな導入のための課題集 をダウンロードして、学習を始めて下さい。書き取りが完成したら必ず両声部を歌って下さい。
その際、ヘ音譜表で書かれた声部を歌う時の音の高さに注意して下さい。「一点ハ音」を歌う時、ト音譜表の上声は、通常通りで良いのですが、ヘ音譜表上の同じ音は、オクターブ高く歌います。声域によってテンションのかかり方に違いがあることを認識できます。この感覚が、後の4声体課題の内声を分離して聞き取る能力の向上に繋がります。

 

2声部聴音導入課題について

2声部聴音課題を書き取るとき「難しい」と感じる点を整理します。

a) 同時に響く2音間の音程が2度など、接近した2声は判別が難しい 
b) 課題のなかで、2音間の音程が完全1度になった場合、ピアノ演奏では単音で響くので、一方が休符なのか、両方が同音になったためかの判断が必要
c) 音響現象によって、下の音(音高の低い音)が上の音(相対的に音高が上部にある音)に覆い被され、聞こえないことがあります。これを「隠蔽」といいます。
2声部聴音でも隠蔽が起きやすい課題では困難さを増します。

 

d) 様々な場面で、どちらの声部に所属する音か、判別が難しい

次の譜例では、減衰した持続音が上声に隠蔽され聞き取りにくいため、声部を適切に分離できず、2小節目の上声が「 ? 」となった。

本課題は、両声部を分離して聞き取りやすく、隠蔽が起こりにくいような工夫をしています。

a) 2声部間の音域を広くする。つまり、上声部と下声部が互いにある程度かい離していた方が分離して聞き取りやすい
b) 冒頭に一方の声部に休符を施して、第2声部の入りに着目しやすくする。開始音が聞き取れれば、あとは追って聞くことができます
c) 2声部間の音価比がほどほどに大きいと(つまり、2分音符に8分音符が対位している等)、両声部とも分離して聞き取りやすくなります。

 

導入課題は、以上のような点を踏まえ、2声部を分離して聞き取る事が容易に出来る課題と、隠蔽されやすい音を集中して聴き続ける能力を高めるよう考慮した課題を順に配列しています。

 

複声部聴音がピアノ学習者にとって有益な練習である理由

複声部課題のピアノによる書き取りでは、減衰した持続音の声部を覆うように他声部の音が響けば、持続音は隠蔽されます。
しかし、人の耳は、減衰後からその音を聞き始めることは困難ですが、発音された時点からなら聞き続けることが可能となるのです。

この聞き続ける集中力が、複声部を操るピアノ演奏に大いに役立つのです。まさに、このことが複声部聴音の最大の目的のひとつです。
一方の持続音に注意を集中させつつ、他方の音群を聞き取る事が出来れば、一度に二人の話が聞ける「聖徳太子」状態になれます。聖徳太子は一度に十人の話を聞き取った、との言い伝えられていますが、音楽でも独立した三つの声部くらいまでは分けて蓄積できるようになります。この重層化が音楽を立体として認識させてくれるのです。同時に話しかけられる言葉は理解が難しいけれど音楽ではできます。複数声部を別々に制御するピアノ演奏者には欠かせない能力です。

INDEX

4声体和声聴音 着実に習得するための課題集 

4声体和声聴音とは

学習手順の考え方と導入課題

2声部聴音導入課題について

複声部聴音がピアノ学習者にとって有益な練習である理由