前項「導入課題1」で新曲演奏は、新聞を読むようなものだけど、ピアノを弾く場合、楽譜と鍵盤との間に距離があり、演奏中に目線が頻繁に移動すれば、タイムロスや混乱が生じる、という説明をしてきました。
もし、鍵盤を見なくても適切に打鍵出来れば、目線の移動は必要なくなります。このような演奏の仕方をブラインドタッチと言います。これができれば、新曲演奏は大層容易になるのです。
導入課題2では、ブラインドタッチで演奏するスキルのうち、大切な二つの基礎を身につけましょう。
文章は、ひとつひとつの文が続き、やがて大きな一つのまとまった意味を持ちます。音楽も、文章のような仕組みで出来ています。ひとつの文は、主語があって述語で閉じます。音楽における「文」にあたるものを大楽節と言います。楽節の閉じ方には、一定の約束のようなものがあります。これを終止の定型と呼びましょう。Exs.1 は、そのひな形です。
ブラインドタッチ習得の基礎は、和声進行の流れを感じ取りながら、鍵盤を見ないで、左手で終止の定型が演奏出来るようになることで、大きく前進します。
Exs.1 を左手で弾いて、終止の定型を覚えましょう。
これを、鍵盤を見ないで弾いてみましょう。
これは、C-durの終止の定型です。C-durの近親調に移調して弾きましょう。
暗譜で、鍵盤を見ないで、様々な調の終止の定型を弾きましょう。
続いて、この終止の定式が、楽曲のどの部分に使われているか探してみて下さい。幾つかの音は、Exs.1のままではありませんが、大筋ではExs.1のヴァリエーションであり、終止の定型の存在に気づいてきます。
終止部分の和声進行に定型があり、そこを意識的に確認しようと心がけているうちに、定型が見えてくるようになり、やがて、楽曲の進行を予測出来るようになります。気にかけない間には見えない景色も、ひとたび意識するようになると見えてくるものです。そうすると、いつも同じようになっていることに気づきます。楽曲がどのように推移するかを予測できるようになることが、ブラインドタッチの二番目の基本です。
導入課題2は、導入課題1と同様の方法で実施してください。右手声部はそのまま新曲視唱の課題として活用して下さい。左手声部は、旋律の和声進行を要約したものです。
ところで、新曲視奏の練習にはバッハの4声部のコラールなどを弾くことがよい、と言われています。それはその通りです。終止の定型が頻繁に現れます。和声進行が生で書かれていますから、良い教材になります。ですが、コラールならではの難しさもあります。例えば、内声を左右の指のいずれで弾くかの判断が必要です。一般的なピアノ音楽作品とは若干スタイルが違うのです。
そこで、導入課題2は、旋律進行の予測が容易で、和声進行が生で見え、鍵盤上の指ポジション移動が少ない課題を作成しています。また、強弱記号、表情記号等の記述は最小限にしています。
ブラインドタッチに慣れることが出来るように、課題に取り組んでみて下さい。
導入課題1と2 を修得した学習者のための補充用課題を用意しました。
導入課題2は、こちらからダウンロードして下さい。 導入課題 2